2025年01月14日更新
【獣医師監修】犬の門脈シャントを徹底解説〜症状・検査・治療について〜
「最近、愛犬の元気がない」「食欲が落ちている」と感じたことはありませんか? こうした何気ない変化の裏には、気づきにくい病気が隠れていることがあります。そのひとつが 門脈シャント という病気です。
門脈シャントは、犬の肝臓の血液循環に関わる重大な疾患であり、早期発見と適切な治療が非常に重要です。放置してしまうと、健康状態が悪化し命に関わることもありますが、早期に治療を行うことで生活の質(QOL)を大きく向上させることができます。
今回は、門脈シャントの基本的な知識から症状、検査、治療について詳しく解説します。
■目次
1.門脈シャントとは
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.当院の治療事例
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ
門脈シャントとは
門脈シャントとは、肝臓に本来流れるはずの血液が異常な血管(シャント)を通って迂回してしまう病気です。
通常、腸で吸収された栄養素や老廃物を含む血液は門脈を通って肝臓に運ばれます。肝臓ではこの血液をろ過し、有害物質を解毒する働きがあります。しかし、門脈シャントが起こると、肝臓を通らずに未処理の血液がそのまま全身を巡るため、有害物質が体内に蓄積し、様々な症状が引き起こされます。
また、門脈シャントには先天性と後天性の2つのタイプがあります。
・先天性門脈シャント
生まれつきシャントが存在する状態で、特に小型犬に多く見られます。以下の犬種が先天性門脈シャントの発症リスクが高いとされています。
・ヨークシャーテリア
・マルチーズ
・ミニチュアシュナウザー
・チワワ
・後天性門脈シャント
慢性肝疾患(肝硬変など)が進行することで、二次的に発生します。
症状
門脈シャントの症状は多岐にわたります。以下の兆候が見られた場合、門脈シャントの可能性があります。
・元気がなくなる
・嘔吐や下痢
・食欲不振
・体重が増えない
・けいれん発作
・異常な行動(ぐるぐる回る、方向感覚を失う)
・多飲多尿
〈日常生活での気づきのポイント〉
飼い主様が日々愛犬と接する際、次のような変化に注意してください。
・食事後に元気がなくなる:食事によって体内でアンモニアが増える可能性があります。
・目の周りや口の色が黄色っぽい(黄疸):肝機能低下のサインです。
・成長が遅い:子犬期に適切な成長が見られない場合、門脈シャントが疑われます。
これらの症状が見られた場合は、早急に動物病院で診察を受けましょう。
診断方法
門脈シャントの診断には、以下のような検査が行われます。
・血液検査
血液中のアンモニアや胆汁酸の濃度を測定し、肝機能の低下を確認します。
・超音波(エコー)検査
お腹の中をリアルタイムで観察し、シャント血管の有無や位置を確認します。
・CT検査
高度な画像診断でシャント血管の位置や大きさを詳細に特定します。手術計画を立てる際に重要な検査です。
・門脈造影検査
造影剤を使用して血管の状態を詳しく調べます。一部の症例で実施されます。
これらの検査を組み合わせることで、最適な治療計画が立てられます。
治療方法
門脈シャントの治療は大きく「外科的治療」と「内科的治療」に分けられます。
〈外科的治療〉
シャント血管を閉鎖し、血液が正常な経路(肝臓)を通るように修正します。早期に手術を行うことで、肝機能の回復が期待できます。ただし、全身状態や体重が不安定な場合は、内科治療で安定させてから手術を検討します。
〈内科的治療〉
手術が難しい場合、または手術前の状態安定化を目的として行います。
・食事療法(低タンパク食):タンパク質を制限した食事を与え、アンモニア産生を抑えます。
・薬物治療:アンモニアを減少させる薬や抗生物質を使用し、症状の緩和を目指します。
内科的治療のみでは完治は難しいですが、症状管理や生活の質を向上させる効果があります。
当院の治療事例
当院では、体重が1kg未満の超小型犬でも、慎重な術前計画と適切な設備・麻酔管理により手術が成功した実例があります。他院で難しいとされたケースでも、ぜひ一度当院までご相談ください。
予防法やご家庭での注意点
門脈シャントは先天性のケースが多く、完全な予防は難しい場合もあります。しかし、早期発見と悪化防止のために、以下の点に注意しましょう。
・定期的な健康診断
子犬期から定期的な血液検査や超音波検査を受け、早期に異常を見つけることが大切です。特に、好発犬種を飼われている飼い主様は、若齢時からの定期健診を心がけましょう。
当院では、『冬の健康診断キャンペーン』を実施しております。胸部レントゲン・腹部エコー・心電図検査をセットにした内容で、オプションで尿検査も追加可能ですので、お気軽にご相談ください。
詳細は「冬の健康診断キャンペーンのお知らせ」をご覧ください
・食事管理
肝臓に優しい低タンパク食や、獣医師が推奨する療法食を与えることで、肝臓への負担を軽減できます。
・適切な体重管理
肥満は肝臓に負担をかけるため、食事や運動で適正体重を維持するよう努めましょう。
・体調変化への早期対応
元気がない、食欲低下、歩き方の異変など、小さなサインを見逃さず、気になる場合は早めに動物病院を受診しましょう。
まとめ
門脈シャントは、早期発見と適切な治療で予後を大きく改善できる病気です。
当院では、超音波検査・CT検査などを用いて正確な診断を行い、1kg未満の超小型犬も含め、多くの症例で治療に成功してきました。
「元気がない」「食欲が落ちた」「異常な行動が増えた」などの症状に気づいたら、できるだけ早くご相談ください。飼い主様と愛犬が安心して過ごせるよう、最善のサポートを提供いたします。
最後になりますが、
私たちが目指すのは、ただの「治療」ではありません。
あなたの大切な家族の一員である子供たち(愛犬、愛猫)が、健康で笑顔溢れる毎日を送るための「ケア」です。
人間医療の高い精度と専門性を動物医療に取り入れ、子供たち(愛犬、愛猫)にとって最良のケアを提供することをお約束します。
当院の想いと設備について
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